ケーススタディ

売買判断のケーススタディ2|注目度の移り変わりを見て人気株を売買

新興市場の銘柄や中小型株は、急に注目されたり、話題になったりすることがあります。すると、もともと売買代金が少ないこともあり、株価が動きやすくなり、ボラティリティが大きくなります。

そのような銘柄を狙い、大きな利益を狙う個人投資家も多いことでしょう。しかし、人気が高まるほど株価がバブル化しやすくなるため、売買のタイミングに注意しなければなりません。今回は、そのような人気株の売買方法を見てみることにしましょう。

買い推奨した理由

当社が買い推奨した人気銘柄としては、CYBERDYNE(7779)などがよい例といえるでしょう。CYBERDYNEが人気化した理由の一つは、事業発展のストーリーが明快であることです。CYBERDYNEは筑波大学発のベンチャー企業で、医療・介護分野に向けたロボットスーツを開発しています。

例えば介護の現場では、患者さんの体を持ち上げるといった重労働をこなします。そのようなときに、ロボットを活用すれば介護者の負担が軽くなります。また、医療現場では手や足のリハビリに活用できます。CYBERDYNEのロボットは、頭で考えたこと(信号)を感知・認識して作動しますので、手や足に障害があったとしても、手をあげる、足を前に出すなどと考えることができれば、体を動かすことができ、医療器具としてリハビリや訓練に使えます。

このような話は、事業として面白さがあり、福祉や社会貢献の面でも推奨されやすいといえるでしょう。そのため、個人投資家に買われやすいのです。当社もそのような人気を踏まえて、2016年3月2日に1,946円で買い推奨しました。

売り推奨した理由

CYBERDYNEは6月14日に売り推奨しました。理由は、英国の国民投票によって中小型株から大型株に資金が移動しつつあったことと、CYBERDYNEの取り組みが、市場全体として評価されるまでにまだ時間がかかりそうだと判断したためです。

CYBERDYNEの事業は堅調でした。適用例も増えていましたし、順調に進展していたといえます。しかし、株価がついてきません。画期的な事業で、将来性も見込めるのですが、市場の評価を得るにはまだ早かったのです。同じことがユーグレナ(2931)についてもいえると思います。ユーグレナはミドリムシを活用した機能性食品などを開発・販売しています。この事業も画期的で、上場して間もなく注目度が高まり、株価は3,000円まで上昇しました。

しかし、その後は低迷が続き、現在は1,000円台前半で推移しています。事業に面白さや独自性があり、個人投資家としても事業発展のストーリーが描きやすいのですが、市場全体ではまだ評価されるところに至っていないのです。CYBERDYNEの場合、例えば適用例がさらに増えていけば、市場の評価が上がっていく可能性があります。ユーグレナは飛行機で使用するジェット燃料の研究を行っていますので、そこに至れば評価も変わるでしょう。

ただ、売り推奨した段階では、まだそのタイミングではありませんでした。そのため、投資効率がよい銘柄に乗り換えようと判断したのです。

売却後の展開

CYBERDYNEは、1,946円で買い推奨し、2,453円で売り推奨しました。数ヶ月の保有で500円の利益ですので、投資効率はよかった方だといえます。また、株価はその後1,500円前後まで下落し、地合いがよかった2017年もその近辺を推移しました。現在は2,000円前後まで回復しましたが、それでも売り推奨した株価には届いていません。

売買判断のポイント

株価上昇につながるという点で、話題性や人気は重要です。ただし、個人投資家の評価が必ずしも株価上昇に結びつくとは限りません。つまり、個人の「面白そうだ」「ワクワクする」といった感覚と株価は別の基準で動いていることが多いのです。将来性がある事業であれば中長期で保有する手もあります。しかし、市場全体が評価し、株価が上昇するまでどれくらい時間がかかるかわかりません。そのような銘柄を持ち続けることにより投資効率が下がってしまうでしょう。

それを避けるには、一つの銘柄に固執せず、市場全体を幅広く見ることが大切です。人気銘柄の売買では、これから注目されるかもしれない銘柄を複数押さえ、その時々のタイミングに合わせながら保有銘柄を乗り換えていくことがポイントです。

本連載は、自著『資金30万円を巨額資産に大化けさせる 銘柄「乗り換え」株式投資法』(幻冬舎)から一部を抜粋したものです。本コラムは実際の投資の成功を保証するものではありません。本コラムを用いた運用は必ずご自身の責任と判断によって行ってください。本コラムの内容に関して運用した結果については、ライジングブル投資顧問株式会社はいかなる責任も負いかねます。なお、本コラムに記載されているデータや法令等は、いずれも執筆当時(2017年12月)のものであり、変更されていることがあります。
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プロフィール

藤村

ライジングブル投資顧問株式会社

代表取締役社長 藤村 哲也

【経歴】

1965年生まれ。横浜市立大学経営学科卒業。1990年太平洋証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)入社、証券営業を経て1996年より投資情報部で証券アナリストとして勤務。合併により2000年よりUFJつばさ証券(現・三菱UFJモルガンスタンレー証券)に勤務し、最終役職はUFJつばさ証券部長代理。独立後、2003年6月にライジングブル投資顧問株式会社を設立。中国株、日本株情報サイトを運営し、会員向けに株による財産形成を総合的にサポートしている。Yahoo! ファイナンス 投資の達人、All About株式ガイド。

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